離婚後共同親権とは何か
離婚後共同親権とは、離婚した夫婦の両方が子どもの親権を持つ制度のことを指します。現在の日本では、離婚後は片方の親にのみ親権が与えられる「単独親権」制度が主流ですが、近年では共同親権を導入する動きがあります。この記事では、共同親権とは何か、共同親権のメリットやデメリット、そして現在の日本の親権制度について詳しく解説します。
離婚後の共同親権導入のメリット
1. 子どもの養育責任が明確になる：離婚後共同親権制度が導入されれば、離婚後も両方の親に子の養育責任があることが明確になります。これにより、子どもの養育に関わる責任を両親が共有することができます。
2. 円滑な面会交流が期待される：共同親権制度の導入により、別居親も子の養育に関わることができます。これにより、子どもと別居している親との面会交流が円滑に行われることが期待されます。
3. 養育費の支払いが確保される：共同親権制度の導入により、養育費の支払いが確保される可能性があります。両親が子どもの養育費を負担することが求められるため、経済的な負担を一方の親だけに押し付けることがなくなります。
4. 子どもの幸福感が向上する：共同親権制度の導入により、子どもが両親との関係を維持しやすくなります。両親が共同で子どもの養育に関わることで、子どもの幸福感や安定感が向上する可能性があります。
5. 両親の負担が軽減される：共同親権制度の導入により、一方の親だけが子どもの養育責任を負うことがなくなります。両親が責任を分担することで、養育の負担が軽減される可能性があります。
以上が、離婚後の共同親権導入のメリットです。共同親権制度の導入により、子どもの養育責任が明確になり、円滑な面会交流や養育費の支払いが期待されます。また、子どもの幸福感が向上し、両親の負担も軽減される可能性があります。
離婚後の共同親権導入のデメリット
1. 子どもの安定した生活環境の確保の難しさ
- 離婚後の共同親権では、子どもが両親のもとを行き来することになります。このため、子どもの生活環境が安定せず、学校や友人関係に影響を与える可能性があります。
2. コミュニケーションの困難さ
- 離婚後の共同親権では、両親が連携して子育てを行う必要があります。しかし、離婚した夫婦間には感情的な摩擦や意見の相違が生じることがあり、コミュニケーションが円滑に行われない場合があります。
3. 親同士の対立や争いの可能性
- 離婚後の共同親権では、両親が子どもの養育に関する意思決定を共同で行う必要があります。しかし、意見の相違や対立が生じた場合、親同士の争いやトラブルが発生する可能性があります。
4. 子どもの負担増加
- 離婚後の共同親権では、子どもが両親のもとを行き来する必要があります。このため、子どもの負担が増え、ストレスや疲労が蓄積する可能性があります。
5. 親子関係の希薄化
- 離婚後の共同親権では、子どもが両親のもとを行き来するため、一方の親との関係が希薄化する可能性があります。これにより、子どもの親子関係が希薄化し、心の安定や成長に影響を与える可能性があります。
以上が、離婚後の共同親権導入のデメリットです。
離婚後共同親権の実務
離婚後の共同親権に関する実務について、最近の動向や議論が注目されています。共同親権とは、離婚した父母が子供の親権を共有する制度であり、現在、法制審議会の部会で導入について議論が進められています。一方で、実務家の弁護士らからは、共同親権の導入に対して慎重な議論を求める声も上がっています。以下では、具体的な議論や意見を紹介します。
共同親権と単独親権の違い
共同親権と単独親権の違いについて説明します。
共同親権とは、離婚後に父と母の両方が子どもの親権を持つ制度です。一方、単独親権は離婚後に親権が片方の親に与えられる制度です。
以下に共同親権と単独親権の違いをまとめました。
共同親権：
- 離婚後も両親が子どもの親権を持ちます。
- 子どもの教育や養育に両親が関与します。
- 子どもは片親と住むことになりますが、もう一方の親とも頻繁に連絡を取り合ったり、子どもが両親の家を行き来することがあります。
単独親権：
- 離婚後に親権が片方の親に与えられます。
- 子どもの教育や養育は親権を持つ親が担当します。
- もう一方の親は子どもとの面会権を持ちますが、子どもの生活環境は片親のもとになります。
共同親権のメリット：
- 子どもが両親と関わることができます。
- 両親が養育や教育に関与するため、子育ての負担が分散されます。
- 親権を巡る争いが減少し、子どものためになる環境を作りやすくなります。
共同親権のデメリット：
- 離婚後も両親が協力しなければならないため、意見の相違やコミュニケーションの困難さが生じることがあります。
- 子どもが片親と住むため、片方の親との面会や連絡が制限される場合があります。
現在の日本では、離婚後に単独親権が一般的ですが、共同親権を導入する動きもあります。共同親権は、子どもの幸福を考える観点から、両親が関与できる環境を提供するという目的があります。
離婚後共同親権に関する議論
離婚後の共同親権に関する議論は、日本において注目されています。以下に、関連する議論の要点をまとめました。
1. 共同親権の導入を提言する要綱案のまとめ
- 法制審議会の部会は、離婚後も父母双方の親権を認める「共同親権」を選べるようにする民法改正の要綱案をまとめました。
- 父母の協議で単独親権か共同親権かを選び、折り合わない場合は家庭裁判所が定めることとなります。
- 現行制度からの大きな転換となるため、導入の可否をめぐる議論では、父母の力関係や家庭内暴力（DV）や虐待への懸念が焦点となります。
2. 共同親権の適用条件と親権の行使
- 要綱案では、共同親権のもとでは、子に関することは父母の話し合いで決めることとなります。
- 日常的なことについては、どちらか一方の判断で決められるようになります。
- 離婚件数の9割近くを占める協議離婚では、父母間の協議で親権者を定めます。
- 合意できない場合や裁判離婚では、家庭裁判所が親子や父母の関係を考慮し、親権者を定めます。
- DVや虐待などを想定しており、いずれかの親の関与が「子の心身に害悪を及ぼすおそれがある」場合には、家裁は単独親権と定めます。
3. 親権の行使における子の利益の重視
- 要綱案では、父母は子に関わることについては、子の利益のため、互いに人格を尊重し、協力しなければならないと明記されています。
- 離婚後も双方が子の成長に責任を持つ必要があるため、現行の民法で「婚姻中は父母が共同して行う」と定められている親権を、婚姻中に限らず、離婚後も双方が持てるようにすることとなります。
以上が、離婚後の共同親権に関する議論の要点です。導入には懸念もありますが、子の利益を重視した親権の行使が求められています。
離婚後共同親権海外事例
離婚後の共同親権に関する海外の事例を調査しました。以下に、アメリカ、ドイツ、オーストラリアの事例を紹介します。
1. アメリカの事例
- 離婚後も両親が共に子を育てる仕組みが定着しています。
- 離婚する際には、両親は裁判所に対して「養育計画書」を提出し、子供の過ごす時間の配分や教育・医療の方針などをまとめます。
- 養育を分担し、子供を互いの家に行き来させる例もあります。また、定期的に面会交流し、重要事項を話し合いで決める父母もいます。
2. ドイツの事例
- ドイツでは、1997年に民法が改正され、離婚後の共同親権が導入されました。
- 日常の養育は子供と暮らす親が担い、重要な事項は両親で決めるのが通例です。
- ドイツでは養育費の不払いは刑事罰の対象であり、DVや虐待をする親は離婚前でも親権を剥奪されるなど、厳格な制度があります。
3. オーストラリアの事例
- オーストラリアでは、1995年に連邦家族法が改正され、子供が父母の両方から世話をされる権利が明記されました。
- 一時期、別居する親と子供の交流に前向きな親を優先する条項があったものの、後に削除されました。
- オーストラリアでは、暴力や虐待の被害を訴えても認められなかった場合、交流に消極的と見なされて親権を剥奪される可能性があるという指摘もあります。
これらの事例からは、共同親権の導入にはメリットと課題が存在することが分かります。共同親権の利点としては、子供が両親によって育てられることが子供の利益につながるという考え方が浸透していることや、両親が養育を分担することで子供にとって安定した環境を提供できることが挙げられます。一方で、関係が悪化した父母の間でのDVや虐待、紛争といった負の影響が続く恐れや、日本の社会にそのまま適用する際には環境整備が必要とされることも指摘されています 。
他国での共同親権の導入状況
1. 日本での議論の現状:
- 現在、国の法制審議会が「親権」の制度を見直すかどうか議論を進めています。
- 2022年11月に、父と母双方を親権者とする「共同親権」を導入する案と、一方のみの「単独親権」を維持する案を併記する中間試案をまとめました。
- 「共同親権」には賛成と反対の声があります。
2. 海外の状況:
- 2020年に法務省が公表した調査によると、日本以外の主要20か国（G20）を含む24か国のうち22か国で、「単独親権」だけでなく、「共同親権」も認められています。
- インドとトルコの2か国のみが「単独親権」制度を採用しています。
- 各国の離婚の制度や親権の概念は異なるため、単純な比較は難しいとされています。
3. オーストラリアの共同親権制度:
- オーストラリアでは、1995年に「共同の親責任」という制度を導入しました。
- 離婚後も両親が共に子どもに対して責任を持つことを推奨しており、養育に関する裁判では両親が平等に重要事項を決定することが推定されます。
- オーストラリアでは、離婚までに事前に様々な取り決めを行うことが特徴的です。
以上が、他国での共同親権の導入状況についての情報です。ただし、各国の制度や文化の違いにより、共同親権の具体的な運用方法は異なる場合があります。
海外の共同親権の問題点
1. コミュニケーションの困難: 離婚後の共同親権では、両親が子供の養育に関して連携し合う必要があります。しかし、離婚した夫婦の間には感情的な対立や意見の相違が生じることがあり、コミュニケーションが困難になることがあります。
2. 意思決定の難しさ: 共同親権では、子供の教育や医療の方針、過ごす時間の配分など、重要な意思決定を両親が共同で行う必要があります。しかし、意見の食い違いや対立が生じることがあり、意思決定が難しくなることがあります。
3. 子供のストレス: 離婚後の共同親権では、子供が両親の間を行き来することが求められます。これにより、子供は新しい環境に順応する必要があり、ストレスを感じることがあります。
4. 親との関係の悪化: 共同親権では、離婚した夫婦が子供の養育に関して連携する必要がありますが、関係が悪化することがあります。このような場合、子供は両親の間での紛争や対立を目の当たりにすることになり、心理的な負担を抱える可能性があります。
5. 国や文化の違い: 共同親権の問題点は、国や文化によっても異なる場合があります。例えば、共同親権の制度が浸透していない国では、共同親権を導入することによる社会的な変化や課題が生じる可能性があります。
これらの問題点を踏まえて、共同親権の導入には慎重な議論と適切な環境整備が必要とされています。
共同親権が見直しを求められる状況
1. 子どもの利益重視の視点：共同親権の導入は、子どもの利益を最優先に考える視点から求められています。単独親権では、片方の親が子どもの養育を担当するため、もう片方の親との関係が希薄になることがあります。共同親権の導入により、両親が子どもの養育に関与し、親子関係を維持することが期待されます。
2. 国際的な動向：日本では、離婚後の共同親権が認められていない一方で、多くの先進国では共同親権が一般的です。国際的な動向に合わせるため、共同親権の導入が求められています。
3. 男女平等の視点：単独親権では、通常は母親が親権を持つことが多く、父親の関与が限定的になることがあります。共同親権の導入により、男女平等の視点から、父親も積極的に子育てに関与できる環境が整うと期待されています。
4. DVや虐待への懸念：共同親権の導入には、DVや虐待への懸念もあります。共同親権を導入する場合、DVや虐待のある親に対しては、単独親権を維持するという条件が設けられることが考えられます。
以上のような要因から、共同親権が見直しを求められる状況となっています。
