米英がフーシ派攻撃：火種の紅海で何が起きているのか
2024年1月11日、バブ・エル・マンデブ海峡を通過する貨物船への攻撃を繰り返すイエメンの武装組織フーシ派に対し、米英軍が攻撃を行いました。この事件は、紅海における地理上のチョークポイントであるバブ・エル・マンデブ海峡において起きています。世界情勢に大きな影響を与えるこの海峡について、詳しく見ていきましょう。
バブ・エル・マンデブ海峡の位置と特徴
- バブ・エル・マンデブ海峡は、アフリカ大陸東部の半島「アフリカの角」とアラビア半島の南端との間に位置する幅32キロほどの海峡です。
- インド洋北西部のアデン湾から紅海に入る玄関口となっており、世界の海運の4分の1がこの海峡を通過しています。
- バブ・エル・マンデブ海峡の東側はイエメンに、西側はエリトリアとジブチの国境地域に接しています。
フーシ派とは？なぜ船舶を攻撃するのか
- フーシ派は、イエメンの武装組織であり、イスラム教シーア派を中心とした組織です。
- フーシ派は、イランとのつながりがあり、イスラム教スンニ派が中心のイエメン政府やサウジアラビアへの攻撃を行ってきました。
- フーシ派は、2023年末にイスラエルとハマスの戦闘が続く中、イラン支援のハマスを支援するためにバブ・エル・マンデブ海峡を航行する船舶を攻撃すると宣言しました。
バブ・エル・マンデブ海峡の歴史と重要性
- バブ・エル・マンデブ（嘆きの門）という名前は、逆流や予測不可能な風、暗礁、浅瀬が多い狭い水路の危険性を指しています。
- 数百年にわたり、バブ・エル・マンデブ海峡では無数の船が難破してきました。現代でも紛争による機雷の危険が存在します。
- バブ・エル・マンデブ海峡は世界の海上輸送の要所であり、世界の海運の4分の1が通過しています。
シーア派スンニ派および対応
シーア派とスンニ派はイスラム教の二つの主要な宗派です。これらの宗派の違いや対応について以下で説明します。
- 指導者の選出：シーア派は預言者ムハンマドの血縁者を指導者とすることを主張します。一方、スンニ派はムハンマドの死後、コミュニティの指導者を選出する方法について異なる意見があります。
- 宗教的権威：シーア派ではイマーム（指導者）が宗教的権威を持ちますが、スンニ派ではウラマー（学者）が宗教的権威を持ちます。
- 宗教的実践：シーア派では悲しみや喜びの儀式や聖地巡礼が重要視されますが、スンニ派ではこれらの実践は一般的には行われません。
2. 中東の対応：
- 国家の宗派構成：中東地域では、シーア派とスンニ派の宗派構成が異なる国があります。イランはシーア派が多数派であり、イラクやレバノンにもシーア派の人口が多いです。一方、サウジアラビアやエジプトはスンニ派が多数派です。
- 政治的対立：宗派の違いが中東地域の政治的な対立にも影響を与えています。例えば、イランとサウジアラビアはシーア派とスンニ派の代表的な国として、地域の影響力を争っています。
ロイターの報告と貨物船の拿捕
1. イラン外務省は、イランが関与しているというイスラエルの主張を否定した。イラン外務省報道官は、地域の抵抗勢力は自発的に行動していると強調し、イスラエルの主張はイスラエルの「回復不能な敗北」から注意をそらすためのものだと指摘した。
2. 国連安全保障理事会の理事国は、イエメンの親イラン武装組織フーシ派に紅海とアデン湾での船舶攻撃停止を求めた。攻撃は違法であり、地域の安定や航行の自由、世界の食料供給を脅かすとしている。また、フーシ派が拿捕した日本郵船運航の貨物船「ギャラクシー・リーダー」と乗組員の解放も求められている。米英、イスラエルはフーシ派による攻撃をイランが支援していると非難しているが、イランはこれを否定している。
3. 日本郵船が運航する貨物船がイエメンの親イラン武装組織フーシ派に拿捕された問題で、船を所有する英ギャラクシー・マリタイムは、船がヘリコプターから不法に乗り込まれ、現在はイエメン西部のホデイダ港付近に位置していると明らかにした。通信は途絶えている。米国は拿捕を国際法違反と非難し、船と乗組員の即時解放を要求している。
米英がフーシ派攻撃、アメリカとイギリスの関与
2024年1月11日、アメリカとイギリスの軍がイエメンの反政府勢力であるフーシ派の拠点を攻撃したことが発表されました。この攻撃は、紅海での商船への報復として行われたものであり、中東情勢が一段と緊迫化しています。バイデン米大統領は声明で、攻撃はフーシ派による商船への攻撃を容認せず、航行の自由を守るための明確なメッセージであると強調しました。オーストラリア、バーレーン、カナダ、オランダもこの攻撃を支援しました。この攻撃により、フーシ派の戦力は大きく弱体化したとされていますが、詳細は明らかにされていません。
フーシ派への空爆と英軍の報復措置
【バイデン大統領の声明】
- アメリカのバイデン大統領は、アメリカ軍とイギリス軍が合同でイエメンの反政府勢力フーシ派の複数の拠点に攻撃を行い、成功したと声明で明らかにしました。
- フーシ派が紅海を航行する船舶に対し弾道ミサイルなどで攻撃を繰り返していることへの直接の対応だとしています。
- バイデン政権の高官は、攻撃の目的はフーシ派の船舶に対する攻撃能力の破壊であり、ミサイルやレーダー、無人機の関連施設を攻撃対象としたと述べました。
【攻撃の内容】
- CNNテレビによると、戦闘機による空爆や潜水艦からの巡航ミサイル「トマホーク」の発射などが行われたと報じられています。
- 攻撃の対象はフーシ派の拠点であり、船舶への攻撃が始まって以降、初めての攻撃となります。
【国際的な反応】
- アメリカ政府は、日本やイギリスなど12か国と共同で声明を発表し、フーシ派に対して「責任を負うことになる」と警告しました。
- 国連安全保障理事会も攻撃を非難し、直ちに攻撃をやめるよう求める決議案を賛成多数で採択しました。
【情勢の背景】
- フーシ派はイスラエルと軍事衝突を続けるイスラム組織ハマスとの連帯を掲げて、船舶への攻撃を繰り返しています。
- アメリカ中央軍によると、フーシ派による攻撃は去年11月19日以降、27回に上るとされています。
以上が、フーシ派への空爆と英軍の報復措置に関する情報です。
ミサイルおよびドローン攻撃の影響
1. 船舶への攻撃の増加: フーシ派による攻撃は紅海で頻繁に行われており、その攻撃の規模が拡大しています。これにより、商船や軍艦などの船舶が攻撃の標的となり、航行の安全性が脅かされています。
2. 航行の制約: フーシ派の攻撃により、紅海の航行が制約されています。商船や軍艦は攻撃を避けるために航路を変更する必要があり、航行時間やコストが増加しています。
3. 国際貿易への影響: 紅海は国際貿易の重要な航路の一つであり、攻撃による航行制約は国際貿易に大きな影響を与えています。船舶の遅延や航路変更により、貨物の輸送に遅れが生じ、経済活動に悪影響を及ぼしています。
4. 安全保障の懸念: フーシ派の攻撃は安全保障上の懸念を引き起こしています。攻撃が続くことで、地域の安定が脅かされ、国際社会は緊張状態に置かれています。また、攻撃の拡大やエスカレーションにより、地域の紛争が悪化する可能性もあります。
イランの支援と米国の行動
1. トランプ政権の対イラン政策の複雑さ
- トランプ政権は、2018年にイラン核合意から一方的に離脱し、イランに対する圧力を段階的に強化してきました。これには、イランの核開発やテロ組織への支援などを理由としています。
- トランプ政権は「最大限の圧力」政策と呼ばれる一連の政策を展開し、イランへの経済的・軍事的圧力を強めました。これには、経済制裁の強化や軍事増派などが含まれます。
2. 米・イラン間の緊張の高まり
- 対イラン制裁の強化とともに、米・イラン間の緊張も軍事的次元にまで高まりました。イランによるタンカーへの攻撃やサウジアラビアの石油施設への攻撃などが頻発しました。
- しかし、トランプ政権はイランとの軍事的衝突を回避する姿勢も示しており、報復措置を取らないこともありました。
- バイデン政権は、イランやイランの支援を受けている民兵組織が米軍に対して攻撃を行うことを抑止するため、イラクでの空爆を実施しました。
以上の情報から、イランの支援と米国の行動は、トランプ政権による圧力強化やバイデン政権による攻撃抑止などを通じて緊張が高まっていることがわかります。
